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【2024/9/1(日)】
■ 仕事行き予定。台風10号、こちら和歌山ではさしたる被害もなくただ翻弄されただけだった。
■ 萩尾望都「半神」読む。名高い作家だが、僕はこれまで縁が無く、今回初めて読んだ。というのも無料で公開されていたのだ。→「半神ー萩尾望都短編集ー 半神 萩尾望都」(=フラコミlike!)
初読のみの感想だが、タイトルがまず、半「身」じゃなくて半「神」なんだな。これは天賦を指してるんだと思う。ここが曲者で、天賦には群を抜く能力はもとより、人生に業なす障害まで含む、としてよいだろう。自分の意志とは関わりない所与のものをいう。
作中では満足することのない日々、あるいは不遇な自分自身に見切りをつけるべく、主人公の少女が自分の意志で、所与たる自身の妹たる文字通りの半身を、外科手術によって切り離そうとする。そうやって人生をリセットし、生まれ変わろうとするのだが(生まれ変わるためには一度死ななければならず、そのために妹は主人公と同様の容貌になって死んだ)、そしてそれは当初成功するが、長じるにつれ鏡に映る自分の顔に捨てたはずの妹の面影を見出していく。
主人公の自意識は連続性を保っているが、妹の存在が自意識に混入することによる混乱が描かれる。物語はそれ以上を示さないが、これを成熟への足場ととらえても良いだろうか。受け入れがたい妹、すなわち天賦を葛藤を経て受容したとき、その存在は主人公とない交ぜになって人生を歩んでいくという、作中では描かれていない将来を辿る可能性はあると思う。そしてそこには、所与ではない自身の意思が必要とされる。
人の人生にとって、天賦は切っても切れないものであり、また天賦はそれを与えられた者の意志を欲するという物語なんだろう。